いつも歩く帰り道
いつもと変わらない道
家まで後少しと言う所で
ふと空を見上げると
冷たい空気に包まれて
オリオンがとても綺麗
いつしかその行為が
アタシのいつもの日課
いつも歩く帰り道
いつも見上げる空
その日もオリオンを見上げた
オリオンは徐々に滲んで見えた
不意に温かい物が頬を伝う
一度通った筋をなぞるように
止めどなく溢れる何か
それは自身の涙
私は・・・泣いているのか
いつも歩く帰り道
いつも同じ時間に見上げる空
目に見えるオリオンは
いつもと変わらないのに
何故か酷く澱んで見える
綺麗だったオリオンを
綺麗だと思えなくなった日
変わってしまったのはアタシの心
変えてしまったのはアタシの弱さ
そう
私は泣いていた
他の誰でもない自分の為に
限界が見えた自分の悲しみの為に
涙が頬を伝い流れる度に
自分の感情が一つずつ
欠落して行くような錯覚
喜び、怒り、哀しみ、楽しさ
寂しさ、憎しみ、憂い・・・
そうしていくつかの感情が欠落し
ある日を境に自ら完全に心を閉ざした
好きで遮断した訳じゃない
ただ
これ以上精神を蝕むのも
気を遣いながら何かを吐き出すのも
愚痴を言う自分を憐れと感じるのも
もう本当に疲れてしまった
携帯の着信音は聞こえない
もう誰の声も聞こえない
ただ聞こえるのは家族の声だけ
アタシを守る唯一のシェルター
日々じわじわ精神を蝕んでゆく感覚
体にどれだけ傷を負ったとて
心を刺す痛みになど比較にならない
少しの傷なら負っても良いと思ったあの頃
思いがけないダメージに沈む
現実の自分とのギャップ
あの頃のアタシはただ
"幸せに"と望んだだけなのに
ただそれだけを求めたのに
何も考えたくない 何も聞きたくない
何か考えると悪いことしか考えないから
何か聞くと悪い方向にしか考えないから
アタシは今
一体何をしたいのだろう
一体何を望んでるんだろう
問いかけても答えは見えなくて
脳裏に掠める甘い記憶と声と温度
本当はそれに縋り付くのが一番と解っていても
「それに甘えてしまってはいけない」
「甘えてしまったら同じ事を繰り返す」
こみ上げる涙がそう警告する
ただ暗い部屋の中に灯り一つ
「アタシは・・・?」
そう自問自答して涙するしか出来ない
いつも歩く帰り道
いつも同じ時刻に浮かぶ星
アタシには
もうオリオンを見上げる事が出来ない
Written By Yuno Kisaragi 19.March,2007 21:13
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